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特許権を侵害する旨の通知があったとき(6) ー自社の実施状況の確認等ー
侵害の警告があった場合、特許権の権利内容について吟味するのと同時に、自社の製品についても、その実施状況を確認する必要があります。
例えば、実施の開始時期、これまでの販売個数や現在の在庫状況、ロット生産方式であればその発注状況、その製品の今後の見通し(製品としての寿命)、設計変更の可能性など、について確認する必要があります。
実施の開始時期によっては、先使用が主張できるかも知れませんし、今後の製品の市場性が明るくない等の見通しがあれば、思い切って実施中止といった選択枝もあります(損害賠償の問題は残ります)。
或いは、それ程、設備等を変更することなく、技術的範囲に含まれないように設計変更が容易にできるかもしれません。設計変更についてあれこれ思案していると、新たな良いアイデアが出てくる可能性もあります。この場合、改良されたアイデアについて、特許出願についても検討すべきです(将来的に、相手よりも有利な立場になり得る可能性があります)。
なお、設計変更する際には、疑義が生じることなく技術的範囲に属さないようにすべきであり、警告者側にその旨を回答しておくのが良いでしょう。中途半端な設計変更では、終結しない可能性があります。また、その際には、相手方が所有している他の特許権についても留意すべきです。折角、設計変更しても、他の特許権に引っ掛かっては、元も子もありません。
おわりに
既述しましたように、費用、時間、手間を考えた際、実際に訴訟のような係争事件になる前に、解決できればこれに越したことはありません。
解決する方法としては、当事者同士の和解(和解契約書や公正証書の作成など)、仲裁センターを利用した和解、裁判手続を利用した和解などがありますが、当然ながら和解交渉を有利に進めたい、との希望があると思います。
和解交渉を有利に進めるためには、技術的範囲に属さないとの理由に一理ある、実際に無効審判請求すると無効になる可能性がある等が交渉材料になると思われますが、それ以外にも、相手方の実施製品を検討して、こちらが所有する特許権を侵害している可能性があれば、それも交渉材料になるでしょう。
なお、書簡による交渉が決裂するような場合、例えば、無効になる蓋然性が高く、その旨を回答書において指摘したにも拘らず、相手方が一方的に強気な交渉をしてくるのであれば、それはもう無効審判を請求せざるを得ない、という状況になるかもしれません。
ただ、実際に無効審判を請求する、という結論に達したのであれば、それは双方にとって手間や費用もかかることであり、権利者サイドとしては権利そのものが消滅してしまう可能性もありますので、無効審判を請求せざるを得ない状況になった旨の回答書を送付するのが好ましい対応ともいえます(この段階になって相手方が折れる可能性も有り得ます)。
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