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早期審査について(1) ー特許出願の審査を速やかに実施してもらう方法ー
特許出願の審査を速やかに実施してもらう方法として、早期審査制度があります。通常の審査では、出願審査請求してから、一次審査結果が送達されるまでには、少なくとも1年以上(2~3年以上のケースもあります)かかると考えられますが、早期審査を申請することで、一次審査結果を早期に入手することが可能です。
1.早期審査を受けるための条件
出願審査請求がされていることを条件に申請手続をする必要があります(出願審査請求と同時に行うことも可能)。また、早期審査を受けるためには、以下のいずれかの条件が満足されていれば可能です。
(ア) 中小企業、個人、大学、公的研究機関、TLOのいずれかの出願であること
(イ) その発明について外国へ出願していること
(ウ) その発明について実施している、或いは実施予定であること
(エ) 省エネ、CO2 の削減等の効果を有するグリーン関連出願であること
(オ) 震災復興支援関連出願であること
(カ) アジア拠点化推進法関連出願であること
なお、上記の(イ)(ウ)が同時に満たされており、特許庁に対してオンラインで手続をしていれば、スーパー早期審査を申請することも可能です。
2.早期審査のメリットとデメリット
現行の早期審査は、申請した後、遅くても4ヶ月以内(平均は2.2ヶ月)には、最初の審査結果を得ることができます。このため、拒絶理由が無ければ、出願してから半年以内に確実に特許権を取得することが可能となります(スーパー早期審査を利用すると、申請から1ヶ月以内に最初の審査結果を得ることができます)。
なお、例外として、審査において、第29条の2の先願となる未公開出願が発見されると、それが公開されるまでは審査が一時保留され、保留されている旨の通知書が送られます。
早期審査を申請することで、早期に特許権を取得することによるメリットもある一方、多少のデメリットも考えられますので、申請に際しては様々な観点から検討すべきです。
以下、メリット/デメリットを幾つか挙げてみます。
(1)特許出願にかかる発明に関する製品を自ら実施しており、また、その発明と類似するような第三者の製品が出現している状況では、早期審査することは有効となります。特に、実施製品そのものに、流行性があるようなケースでは、早期審査制度は非常に有効となります(この点、現行の実用新案制度の存在意義は多少薄れているかもしれません)。
上記のように、早期審査がなされると、通常の審査と比較して、早期に特許権を取得することが可能となりますので、第三者の実施行為を早期に抑えることができます。なお、早期審査に限られることではありませんが、第三者の実施品が出回っているような段階では、クレーム補正等の中間処理手続には細心の注意が必要になります(後の包袋禁反言に関する指摘、新規事項の追加など)。
ただし、第三者の実施品が出回っていない等、その特許出願が抑止的な効果を発揮しているような場合(出願人側でこの判断をするのは難しいでしょうが…)において、早期審査の申請により拒絶査定(拒絶審決)が確定してしまうと、そのような抑止的な効果は早期になくなってしまいます。
このため、発明のポイントを変えた分割出願を行ない、その分割出願について早期審査することが考えられます。分割出願の拒絶が確定しても、原出願を残しておくことが可能であり、原出願を審査請求した場合の公知技術を予め予測することが可能となります。
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