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意匠への出願変更の実務上の留意点 ー実務上のテクニックー
特許出願した後、その特許出願を意匠登録出願に変更することが可能です。
特許出願を考慮していたところ、物品の外観にも特徴が見出せる場合、将来的な意匠登録出願への変更を考慮して、特許図面に、その物品の六面図を含ませることがあります。
特許出願を意匠登録出願に変更する場合、特許出願はみなし取り下げとなってしまうため、特許出願を係属させるために、実務上のテクニックとして、特許出願を分割し、その分割出願を意匠登録出願に変更することが行われます。このような方法によれば、変更出願の基礎となった分割出願が見なし取り下げされますが、特許出願は、原出願がそのまま係属するため、ある物品に関し、意匠権と特許権を取得することが可能になります。
ところが、特許出願を分割するに際して、留意すべき事項があります。
分割出願する場合、原出願との間で明細書、請求項を全く同一にする(いわゆるデッドコピー)と、分割出願については、分割の要件を満たさないため出願日が遡及しません。すなわち、分割出願が適法であるためには、「原出願と分割出願が同一でないこと」が要件となっており、原出願と分割出願が全く同一であれば、分割出願の出願日の遡及が認められない可能性が出てきます。
また、分割出願を意匠登録出願に変更する場合、出願変更時に分割出願がみなし取り下げされるため、分割出願を補正する機会がなくなります(分割要件を満たすような補正をする機会が失われます)。
特許庁では、意匠登録出願を審査するにあたり、基礎となる分割出願が原出願との間で分割要件を満たしているか否かは審査しないようです。
そして、このような問題が顕在化するのは、係争が生じたときなど事後のケースが多く、そのときには、分割出願は既にみなし取り下げされており、また、原出願については、補正ができない状況になっている(分割出願との間で分割要件を満たすような補正ができない)可能性もあり得ます。
このため、意匠登録出願を考慮して特許出願を分割するのであれば、分割出願の請求項は、原出願の発明と確実に異なるように変更しておくことが重要となります。
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