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分割出願について(1) ー分割出願を行う実務上のケースー
特許出願した後、その特許出願を分割することは実務上よく行われます。
一般的に分割出願は、以下のようなケースのときに考慮されます。
1.出願の単一性違反
最初の拒絶理由通知のときに、出願の単一性(第37条)の要件を満たしていないとの通知があった場合、或いは、拒絶理由通知後にした補正が、第17条の2第4項(シフト補正の禁止)の規定に該当してしまった場合など。
このようなケースでは、審査されていないと指摘のあったクレーム(第17条の2第4項に該当したクレーム)について審査をしてもらいたければ、分割出願を考慮せざるを得ません。なお、第37条、及び第17条の2第4項は、拒絶理由ではあるものの、無効理由ではありませんので、この判断自体を争うよりは、分割出願した方が得策ともいえます。
2.許可可能なクレームの早期権利化、拒絶クレームの再構築など
クレームが複数あり、既に審査段階で、その内の幾つかが、拒絶理由を発見しない、との判断がされているようなケースでは、分割出願を考慮することがあります。
この場合、審査において許可可能との判断がされているクレームを補正によって残しておき、拒絶理由が提起されているクレームに関する発明については分割出願した方が良い場合もありますので要検討となります。
通常、補正(前置補正を含む)は、同じ審査官が再審査しますので、許可可能との判断を既に出したクレームに限定した補正をすることで、そのまま権利化される可能性がきわめて高いと思われます(必要な部分についての早期権利化を図る)。そして、拒絶理由の対象となった発明については、分割出願して、できるだけ広い権利が取得できるよう内容をじっくり検討したり、或いは、どうしても権利化が必要であれば、最終的に争う(拒絶査定不服審判、審決取消訴訟)こともできます。
なお、分割出願において、原出願において拒絶された請求項をそのまま記載した場合、第50条の2の通知(拒絶理由の通知は最初であるものの、補正の制限が「最後」と同様になる)がなされます。また、分割出願時では、上申書を提出して原出願との相違を述べておくことが好ましいでしょう。
3.意匠への変更
特許を意匠登録出願に変更する場合、意匠登録出願に変更すると、特許出願は、みなし取り下げされます。
特許出願をそのまま残したいときは、分割出願を行ない、その分割出願を意匠登録出願に変更します。
なお、分割出願するに際しては、原出願との間で請求項が同一とならないようにする必要があります。
4.その他
明細書内に開示されていた技術で、クレームアップされていなかった発明について、出願後に権利化を図りたいようなケースがあります。特に、拒絶理由通知が無く、いきなり特許査定されたケースでは、出願時において、発明が十分にカバーされていないことも考えられますので、要注意となります。
また、第三者の実施状況、将来的な権利行使、ライセンスの供与等、戦術的な意味合いから分割出願を検討するようなケースもあります。
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